(どうしたらいいんだこの状況)
俺はまったく分からない
「あの、アシカさん」
ラウルが口を開いた
「なんでしょう」
(おお、助け舟か!)
俺はちょっと期待した
「私はちょっと見てきたいものがありますのでこれで失礼します」
(えーーー!!?ちょ、ちょっと待て)
「オルカさんもまた」
そういうとラウルは背を向けた
「さっき約束したじゃないか!」
何かが俺の奥底から出てきた
「ん?」
ラウルは振り返った
「え、えと、家でご飯を食べていくってさ」
俺は苦し紛れに言った
「オルカ、約束したの?」
アシカが俺の顔をのぞいている
「あ、ああ」
俺は完全に動揺している
「約束したなら守るしかないね」
アシカはニコニコしている
「ラウルさん行きましょう、あたしたちの家へ」
ラウルはちらっとこっちを見た
俺はここで嫌とか言うなよと願った
「わかりました」
俺は少し安堵した
「しかし先ほども言ったように見てきたいものがあります」
(おーい、おまえ、わかっているのか!)
俺はラウルに心の中で叫んだ
「では、一緒に見に行きましょう」
「は?」
(どうなった?)
俺は少しボーっとなった
「ほら、オルカ行くわよ」
と聞こえた
二人は歩き始めている
(行くしかないな)
俺は腹をくくった
二人について歩き出したが
なんだか不安になってきた
見たことのないところだし
この先どうなるのだろうという思いがしてきた
すれ違う人たちはもちろん見たことのない人ばかりだ
(あれ?)
何やっているんだあそこで
二人で何かを叩いている
「ヤドリチヌスを追い出そうとしているのですね」
ラウルが言った
二人が立ち止まって俺と同じところを見ている
「とり憑かれたら三日は離れないです」
アシカが深刻そうな顔で見ている
「そうですか」
そう言うとラウルは叩いている二人のほうへ歩き出した
俺も行こうとした
「馬鹿!オルカ行っちゃダメ!」
「え?だってラウルが・・・」
「あんた封印紙持っていないでしょ?」
「封印紙?」
「あの人は持っているわ」
俺はラウルを見た
至って普通に近づいているように見える
すると突然ラウルの周りが光り出した
(なんだ!?)
始期 一(5)
小説「主【NUSHI】」
諸麗真澄