始期 二(2)

小説「主【NUSHI】」
諸麗真澄

夜、寝床で俺はなぜか眠れなかった
ラウルは宿屋に泊まっているみたいだ
向こうにはアシカが毛布を掛けて寝ている
俺は静かに起きると、家の扉を開けて外に出た
空を見上げると星ぼしが瞬いている
(綺麗だな)
少し俺は歩いた
すると
「よーっす、オルカっち」
誰かが俺に声を掛けてきた
「誰だおまえ」
声のほうを向いて俺は聞いた
「はぁ?おれっちのこと忘れたんすか?」
俺は首を傾げて目を瞑って考えたが
分からない
「サトバですけど」
「剣の稽古をつけてくださいよ」
なんの話だと思った
「剣もっていないぞ」
「あー、この木刀つかってください」
サトバはそういうと木刀を一本投げてよこした
俺は木刀を拾って握った
すると、サトバが木刀を振りかぶって俺に突進してきた
(!?)
ガシッ
俺は木刀でサトバの攻撃を受けた
サトバは一瞬後ろに下がり
木刀を十字に振り払った
その攻撃を俺は受け流している
(!?)
次々にサトバは打ち込んできたが
すべて俺は木刀で受け払った
「相変わらずやるじゃん、オルカっち」
「攻撃してこないんすか?」
サトバは何かを俺に投げた
「うっ!?」
何かが目に入った
「攻撃してこないから、目くらましの刑じゃん」
サトバは木刀を振りかぶると
俺の頭上に振り下ろした
ガシィィッッッ
サトバの木刀がクルクルと回転しながら弾けとんだ
目を瞑っていた俺は木刀を下から上に一瞬の間にすくいあげていた
「ほえー、すげーじゃん、オルカっち」
サトバが手を叩いた
「おまえこんな時間に何しているんだ」
「あー、さんぽっす」
「オルカっちに会えるかなっておもってさ」
「オルカっちもおれっちに会いたかったんでしょ?」
「なんか少し寒いな」
そういうと俺は木刀を返しサトバに背を向けて家に戻ることにした
「また稽古つけてくださいねー」
後ろからサトバが言った
「ああ、またな」
俺は家に向かって歩き出した
(なんなんだあいつは)
少しボーっとなっていた俺は思った