二十四「消えそうな記憶」

私の考えです。
今日は、六十項目の
二十四「消えそうな記憶」です。
あれは私が初めて人間と話したときのことです。話したとは、会話をしたと
いう記憶が残っている一番古い記憶のことです。私が人として生きた
千五百年の間の話しです。二歳のときで、私の母親との会話でした。
とても強く優しい母親でした。母親は私に問いかけたのです。
おまえは私の宝物、私がおまえにずっとついています。もしおまえが
私を嫌いになっても、私は常におまえのことを思い、おまえのために
してあげられる最善のことをしてあげます。でもね、もしおまえが人の道を
外れたとき、私はおまえを厳しく罰しなければなりません。それが私が
おまえを産んだ責任だからです。おまえは私のこの思い分かりますか?
そんな問いかけでした。私は答えました。私はあなたから産まれました。
あなたが思われることは、私の思いの一つでもあります。ですから
心配なさらないでください。私はきちんと自分の道を進めますよ。
母親は私の答えにうなずき、そしてこう言いました。
おまえがこれからしようとすること、私がしかと見届けます。
母親はとても強かった。息をひきとるまで私のことを思い、私に
つくしてくれました。もし私の生涯にあの母親がいなければ、
私は今こうして百ほどの魂の一つとして存在していなかったのでは
ないかと、ふと、消えそうな記憶を思い出しました。
ですから、私はこのものについて、このものと共に歩む。それが、
私につくしてくれた私の母親への恩返しになるのではないかと思うのです。

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